ハローサマー、グッドバイ ― 2009年09月12日 18:09
とても、心温まる小説を読みました。良い本ですね。
話を俯瞰的に見ると、戦争や、凍えるような寒さ、政府と民衆の争いなど暗い局面があるのですが、主人公ドローヴの思春期男子っぷりや、ヒロインのブラウンアイズの人柄、二人の関係、リボンの小悪魔的な視線とかが、とてもほのぼのさせてくれます。
また、他の登場人物も、きちんと描かれています。街の友達ウルフやスクウィント、リボンの父親ストロングアーム、役人のメストラー、ドローヴの父や母。不思議とどの人の顔も見えてくるような気がします。例えば、5人で遊んでいる中、ドローヴとブラウンアイズ、ウルフとリボンの二手に分かれることになった時に、仲間外れにされたスクウィントが小さな子供らしく拗ね、それでいてそれぞれ二人の関係を意識して、一人立ち去る所とかは、目にうかぶようです。面白くて、思わず笑っちゃいました。(その後、笑ってられない、ひどいことになるのですが)
後は、大仕掛けではありますが、SF的な構成が話の背景となっているのも、良かったです。スポットCMに出ていた頃のストレイシープを思い起こさせるロリンが、いいアジを出していました。
夏が終わり、秋が始まるこの時期に、この本を読めてよかったです。この本の売れ行き次第では、続編の翻訳があるかもという事ですが、出来れば読んでみたいモノです。
若者はなぜ3年で辞めるのか?(年功序列が奪う日本の未来) ― 2009年06月14日 19:00
読了。
年度初め恒例の目標設定をする中で「なぜ目標設定をするのか」という点が気になり、読んでみました。
- なぜ、仕事が忙しいのだろうか(現状)
- なぜ、カイゼンも含めた目標が1労働者に求められるのだろうか(疑問)
- 幸せな仕事とは何だろうか(理想)
年功序列(昭和的価値観)をシステムとして説明し、時代とシステムとの不一致の上で、若者が年配者に搾取されている。若者たちに向けて、昭和的価値観のフィルターを外した目で見ることが出きるようになってほしい。そんな話でした。
労働(量や質)という資産を誰が受け持つのか。受け持った者に対する適切なリターン(信頼や信用も含めた)をどう提供するのか。どこが公平でどこが公平でないのか。自分にとっては、プロジェクトを越えた頑張りや努力を求められる事をある程度は許容しているつもりです。しかし忙しいという現実から、信頼されている実感のないままに目標(という名の結果)の提出が求められるのは、公平性にかけると思いました。
この本からは上記の3つの疑問への解答は得られませんが、「何に対して不満をもっているのか」という事を頭で整理しようとするキッカケを得ることができました。
ヴォイス ― 2008年09月07日 01:13
読了。
宗教観/生活観の異なる2つの部族にかかわる話です。 活き活きとした少女が大人になっていく物語。ギフトの主人公ら(オレックとグライ)が、街に到着することで大きく話が展開していきます。
つらい戦いの中でも、生活が楽しく描かれています。女性視点での街の描き方、食事の描き方、特に多様な神々への信仰の描き方がうまいです。祠へ敬意を表しながら、主人公のメマーが街をかけていくのがはっきりとイメージできます。
主人公のメマーは、街の歴史を作る男達のそばにいる事で、少しずつ大人になっていきます。最後には、認められ、新たな旅を意識させる終わり方がとてもすがすがしいです。
ギフトと同じく、少し短絡的な感じもしますが、児童書ということを考えるとこれで良い気がします。次作のパワーも、読みたくなってきます。
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